「海外旅行における新型インフルエンザ対策セミナー「抄録」

海外渡航者の心構え


濱田 篤郎

労働者健康福祉機構
海外勤務健康管理センター 所長代理


鳥インフルエンザの世界的な蔓延にともない、新型インフルエンザの流行が危惧されている。海外に滞在する日本人は、この災禍を最初に蒙る可能性があるばかりでなく、ひとたび流行が発生すれば国内への退避も困難になることが予想される。こうした状況において海外渡航者はどのような心構えを持つべきだろうか。
海外旅行者については正確な情報を入手し、新型の流行が発生する危険性がある地域への旅行を控えることである。旅行会社側もこうした情報を旅客に提供することが求められている。では正確な情報とはいかなるものか。それはWHOや外務省など公的機関から発表される情報が信頼性の高いものと言えよう。さらに、新型の流行が発生していなくとも、旅行中はウガイや手洗いなど、飛沫感染を防ぐ対策を実施していただきたい。とくに、鳥インフルエンザが発生している地域では、生きた家禽類が飼育されている市場などへの立ち入りを控えるべきである。
海外に仕事で滞在している方々については、派遣元の国内企業が責任をもって対応していただきたい。もし社員が海外で新型インフルエンザにかかり、現地で医療を受けるとなると、国内に比べて多くのリスクが存在する。滞在国の医療水準や治療薬の供給状況だけでなく、患者への人権的扱い、さらには流行に伴って発生する社会不安も考慮した上で、現地での医療対応を考えるべきである。現地で適切な医療を受けることが困難と判断されれば、早めに社員を日本国内に退避させるようにしていただきたい。こうした企業での対応を支援するため、海外勤務健康管理センターでは「海外派遣企業での新型インフルエンザ対策ガイドライン」を発表した。今回の講演会ではその内容も紹介する予定である。
新型インフルエンザの流行にあたっては、渡航者本人の自己責任が強く問われることになる。いかに自分達の力で疫病の災禍を克服していくか。これが最も大切な心構えと言えるだろう。なぜなら、ひとたび流行が発生してしまえば、国内も同様な災禍にみまわれ、とても海外にとり残された方々まで支援ができなくなるからである。そうなる前に、旅行会社や海外派遣企業では万全の対策をとっていただきたいのである。